7本指のピアニスト西川悟平さんの感動の2時間


イベント後、西川さんと保護者会役員、教職員で記念撮影

令和7年2月10日(月)
先週の土曜日、保護者会イベントとして世界的ピアニスト西川悟平さんによるトーク&ピアノコンサートを開催しました。80名近くの保護者、生徒が集まりました。90分の予定でしたが、30分も延長してくれて、最後まで熱のこもったステージでした。
これまでの私の教員人生を振り返って、数多くの方々が学校にいらして講演や演奏をされ、その場に居合わせてきましたが、今回ほど、鳥肌が立つ感動を覚えたことはありません。
私は、イベントの当日までに、西川さん本人の公式サイトやインターネット上の記事に一通り目を通し、彼の激動の半生を知り、実際にお目にかかれることを心待ちにしていましたが、直接触れた彼の語りとピアノは、想像をはるかに超え、心が震えました。
西川さんは、指の障害を乗り越え、2020東京パラリンピックの閉会式でトリを務めるほどの名ピアニストですが、サクセスストーリーという一言では語り切れないほど、数多の苦難、試練、逆境に満ちた人生を送ってこられました。15歳でピアノを始め、「そんな遅い年齢では音大進学は無理」という周囲の声にめげず懸命に努力し、短大ピアノ科に合格します。その後も猛練習を重ね、ニューヨークに渡りプロになりますが、練習のやり過ぎがたたり、27歳で神経障害をもたらすジストニアを発症。一時は、動く指が5本となってしまい、5人の医師全員から「プロとしてピアノを弾くことはもう不可能」と診断され絶望します。ところが、たまたま知り合いが勤める幼稚園に呼ばれ、5本指で弾いた「きらきら星」にアメリカの子供たちは大喜び。自分にはまだ人を喜ばす力があることに子供たちに気づかされ、それが再起のきっかけとなります。そして、懸命なリハビリの末、指は7本まで回復し、様々な人たちとの出会いを大切にしながら現在の名声にまでたどり着きます。
西川さんからは、現実離れしたすごい体験の数々が紹介されましたが、ここでは話をかなり端折って書いています。それは、私のような稚拙な文章では、西川さんのこれまでの壮絶な生き様をリアルにお伝えするのは難しいと思うからです。私が言葉にした瞬間に陳腐な人生話にしてしまうのが怖いので、このくらいにして、詳しくは是非、インターネットで検索してください。動画で、西川さんの生の姿を楽しんでください。
何より、聴衆が西川さんの虜になってしまうのは、彼が底抜けに明るい性格の持ち主であるからだと思います。彼は、数々の苦難、試練、逆境を明るいユーモアで笑い飛ばしながら語ります。そのざっくばらんなお人柄とトークの合間に弾いてくれるピアノの力強い、心にしみる音色とのギャップがたまらなく心を揺さぶるのです。そして、トーク&ピアノ全体を通じて伝わる彼の前向きな姿が私たちに勇気と希望を与えてくれるのです。(コンサートとはいえ、トークの量や面白さから「ピアノ界の『さだまさし』だ」と勝手に心で叫んでいました。失礼しました、西川さん。)
希望参加した生徒たちに「未来のなりたい自分を思い浮かべ、それをいつも口に出そう」をはじめ、人生を成功に導く貴重なアドバイスをふんだんに伝えてくれました。最後のQ&Aで質問をした生徒達への温かい言葉がけもまたとても印象的でした。参加生徒の中に、以前の「校長journal」でも紹介したことのある生徒会長の金井さんがいました。彼女は音楽の教師を目指しています。会の終了後、彼女に「音楽の先生になった時に、今日の感動を必ず子供たちに伝えてね」と声をかけると、元気よく「はい!」と答えてくれました。彼女がどんな笑顔で今日の体験を教室で話してくれるのか、想像するとわくわくしますね。
私は今度西川さんのコンサートを見に行って、同じ感動をまた味わいたいと思っています。
このイベントを企画し、西川さんに出演交渉をしてくれた大庭保護者会長さんの行動力に感謝します。ありがとうございました。また、当日お手伝いをしてくれた保護者会の役員の皆様、お疲れさまでした。